ゼニューって何?
京都に住んでいた、学生の頃の事ですが、
「U野ちゃん」という女友達がおりました。
男っぽいというか、豪放磊落な性格で、お酒が大好き。
良く、私達、男連中との、飲みにも付き合ってくれる娘でした。
今でこそ、男友達と朝まで飲んだりする女の子は、まま、居たりしますが、私の学生時分では、一人暮らしの女の子でも、なかなか、考えられなかったものです。
そんな、中で、「U野ちゃん」は、飲むと陽気になるのですが、同時に危ないところもあって、飲んでの帰り道、ゴミ集積所で寝るクセもありました。
みんなで歩いていて、
「あれ、U野ちゃんが居らんぞ」
というと、大抵、道ばたのゴミ置き場で、当時は青いビニールのゴミ袋でしたが、それを抱きしめて寝ていたものです。
付き合いの良い、U野ちゃんでしたが、
たまに、
「あー、行きたいけど…今日は、ゼニューに行きたいなぁ」
という日があって、断られる事もありました。
「…おー、そうか…ゼニュー…はな、大切だからな…うん…ま、じゃあ次回と言う事で…」
曖昧な返答しておりましたが、実はなんの事やら解りません。
「U野ちゃんが、タマに言うゼニューとは何や?」
「なんかのサークルなんかな?」
「怪しいシンコーシューキョーだったりしたら、友達として何か言うべきやろか?」
「今日は、ゼニュー教のお祈りの日って事?…でも、ゼニュー教って、聞いた事ある?」
「ゼニュー」を肴に、議論に及んだ事もありましたが、
友達の中で、ゼニューを知るものは誰一人居ませんでした。
聞いてみて、思いっきり常識的な話だったりしたら、恥ずかしいし、本当にいかがわしい団体だったりしたら、対処にも困るし、暫く本人にも聞かなかったのですが、
ある日、やっぱり、
「あー、今日は、ゼニューの日」
といったので、
「U野ちゃんが、タマに言ってる…その、ゼニュー…って何?」
思い切って聞いてみました。
「えっ? 知らないの? お風呂屋さんの事やん! 暖簾とかにも書いてあるでしょ?〝ぜにゆ〟って」
「…あれ、〝せんとう〟(銭湯)って読むんやけど…」
教えられて、U野ちゃんは、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていましたが、なんでも、ご両親揃って、銭湯を「ぜにゆ」って言っていたそうです。
まあ、、地方によっては、本当に「ぜにゆ」って言うのかも知れません。
風呂付きのアパートが普通になって、東京辺りでは、余り見掛けなくなった「銭湯」(←好きに読んで)ですが、
「京都では、どうなんだろう?」
と思って、グーグルマップで、かつて住んで居た辺りを歩いてみましたら、U野ちゃんが通って居た「ゼニュー」は現在でも健在で、少し懐かしい思いが致しました。(^^ゞ