パロディー・ショート★恋人がセント・ニクラウス #クリスマス #恋人が #サンタクロース

パロディー・ショート★恋人がセント・ニクラウス

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恋人がサンタクロースならこんな感じ

私が、幼女の頃だった。ある年の、クリスマスの夕方の事である。
隣家に、オシャレだが、中身のないお姉さんが、住んでいた。
その日、たいして親しくもない、私に向かって、彼女は、
「今夜ね。八時になると、家にサンタクロースがくるの」
と言ってきた。
何を素っ頓狂な事を…私は、彼女の頭を疑った。オシャレに現を抜かして、現実が見えなくなっている。そう思った。
「あのね。それは、お伽話。気持ちをしっかり持って。サンタクロースなんて居ない。そもそも、サンタクロースとはセント・ニコラウスの事で…」
諭そうとしたが、彼女は、
「クスッ」
と嗤って、話を遮った。その笑い方が、見下したように見えて、私の心を著しく傷つけた。
「あなたも、私の年齢になれば分かる様になるわ」
そう言って、ウインクを投げてきた。強かな、マウントの取り方だった。
その晩、彼女が言ったように、本当に八時にサンタクロースがやって来るのか、リビングの窓から隣家を見張っていたが、やってきたのは、お姉さんと年の近い、にやけた男が、一人来たっきりだった。母にケーキを早く食べる様、促されたため、サンタクロースの現認はできなかった。
お姉さんの「ウソ」を追求出来ないまま、年が明けた。明けて暫くして、彼女は、ご両親に涙しながら何処かに行ってしまった。
隣のお姉さんに、マウントを取られたままなのは、悔しかったが、程なく、私も、父の仕事の関係で、引っ越してゆく事になった。
それから、十数回、冬を迎えたが、その度に、彼女の事と、あの時の屈辱を思い出す。
私も人並みに恋をし、彼氏が挨拶に来る日がやってきた。奇しくも、それがクリスマスの夜だった。
彼氏が両親に挨拶をしている時、ふと、あの時、隣のお姉さんは、彼氏の事をサンタクロースと比喩していたのではないか? と思った。
気が付いた時、
「…負けた」
と思った。目の前が暗くなるほどの、敗北を感じていた。
「どうしたの? 顔色が青いよ。大丈夫?」
「…な…なんでもないの…式は、神前式にしたいだけ」
「…いいけど、ウエディングドレスにしたいって言ってなかった?」
「気が変わったの」
せめて、隣のお姉さんとは、違う結婚式を挙げたかった。それだけが、唯一、私のプライドの均整を維持する方法に思えたからである。
…お姉さんも神前式で挙式してたりして…(^^ゞ

※この、パロディーは、フィクションであり、実在するいかなる団体とも関係ありません。

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