出世魚の話 #出世魚 #トラウト #サーモン

出世魚の話

【問題】

次の魚の中で「出世魚」はどれでしょう?
ニジマス
・アユ
・ボラ
・スズキ
・サケ
・ブリ

【答え】

ニジマス
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本当に出世した魚といえば、ニジマスでしょう。元々、北米からカムチャツカ半島辺りに生息する、ローカル魚だったのに、現在では、北半球の温帯地方以北、南半球でもニュージーランドや、南米のチリ等でも養殖が盛んで、世界中に流通しています。まさに「出世魚」。
といっても、人間目線での出世ですけど。
【寿司ネタのサーモンも実はニジマス
寿司ネタに「サーモン」がありますが、サーモン(一般に鮭の事)とは名ばかりで、あれはニジマスです。スーパーではサクで売ってる時はサーモンで、姿売りだとニジマスだったりします。
「トラウト」だと流通しにくいから「サーモン」としているのかも知れませんね。
しかし「サーモントラウト」という言い方もあるので、嘘を言っている訳ではないでしょう。
ニジマスだから、ワンランク落ちるわけではありません。トラウトにはサーモンにない味わいがありますし、養殖技術の発達で高級食材になっています。完全管理なので寄生虫も居ません。
【種あるトラウト属の中で何故ニジマスだけが出世したか】
ニジマスの仲間、トラウト属には、イワナ、ヤマメ、アマゴ、ブラウントラウト、カワマス、イトウ、等々、沢山居るのに、何故ニジマスだけが、世界で養殖が盛んになったのか? それは、適応力の高さにありました。マス類は、冷水を好む魚ですが、ニジマスは他のマス類より、比較的高い水温にも適応するため、養殖しやすかったようです。自然の渓谷を利用した「管理釣り場」での対象魚としても人気ですが、元々、米大陸から来た魚で「大河に棲む」というイメージが強く、北海道を除けば、日本河川での自然繁殖は無理と言われていました。
しかし、私の経験上、日本各地で大昔に放流したニジマスが、自然に繁殖しているという例は沢山あります。しかも、水量のあまり多くない渓流で、そこそこ大物のニジマスが釣れることも良くあります。それだけ、適応力の高い魚なんですね。
【サケ・マス類は何故、降海(海降)するのか】
サケ・マス類の降海は良く知られていますが、当然、理由があります。サケ・マス類の棲む渓谷は、冷水域で夏も短い所が殆どです。餌となる昆虫等も少なく、生れてきた個体が、より生きてゆくには餌の量が足りません。餌の摂れる流れ込み等は強い個体が独占する為に、弱い個体達は海に下って、豊富な餌を得るようになりました。サケの場合は4年、ヤマメ・アマゴ等は3年で、産卵の為に生まれた川に戻ってきます。サケ・マス類にとって、海は、あくまでも生まれ故郷の延長であり、渓流こそが自身の縄張り、生息地なわけです。
【餌の豊富な地域では降海する例は少ない】
渓谷に餌となる昆虫や小動物が豊富な地域の川では、降海する個体は少なくなります。ヤマメ等も西日本に行くほど、渓流での餌が豊富で、降海する個体が減って行きます。サケ・マス類は基本川魚、川魚が海に下っているということなんですね。
【アユも川を遡上するが】
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アユも川を遡上し、サケ・マス類と似た行動を取りますが、アユの本拠地は、どちらかと言えば河口付近で、成長の為に清流迄遡上するようです。稚魚の頃は河口付近の海で暮らし、5~6月頃に遡上、真夏を清流域のコケを食べて過ごし、成長して秋に河口に下り産卵します。
アユはキュウリウオ科の魚ですが、サケ・マス類と同様、背びれと尾びれの間に「アブラビレ」というヒレを持っています。アユの場合、子孫が同じ川を遡上するとは限りません。江戸川で生まれたアユが、多摩川を遡上するという様な例も多く報告されています。アユの場合、海の延長で川があると観た方が良いでしょう。
多摩川のサケ】
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高度経済成長期に、水質汚染で一時期「死の川」となった多摩川ですが、水質の良くなった現在。サケの遡上を復活させようとして、毎年、稚魚を放流しています。その甲斐あって、最近ではそれなりにサケの遡上が観られているようです。多摩川のサケは、大変珍しい例として専門家の間で知られています。
太平洋側のサケ棲息河川の南限は、多摩川だそうですが、海流的に、サケが棲息するには、ちょっと、珍しい川なんだそうです。問題は東京湾沖の暖流にあります。房総沖で南から来る暖流と北から来る寒流とがぶつかって、小笠原方面に流れてゆきます。サケは、寒流で育ちますが、多摩川のサケは苦手な暖流を横切って、寒流に入り、成長してまだ暖流を横切って多摩川に入ります。こういう、サケは世界的にも珍しく、だからこそ、かつて、天然に生息したサケの復活を試みたようです。
因みに、鎌倉期、源頼朝の膳にのぼったサケは、多摩川で取れたものでした。当時は超高級食材だったそうです。
【本当の出世魚たち】
比喩として、出世魚ニジマスとしましたが、本来の出世魚は、ブリ、スズキ、ボラ等ですね。他にも、イワシ類とかも居ますが、成長と共に名前が変わるので「大名魚」とも言います。
ブリ「鰤」
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代表的な呼び名
関東:ワカシ →イナダ → ワラサ → ブリ
関西:ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ

最近では、養殖物をハマチ、天然物をブリ、と区別する事が多い様です。

スズキ「鱸」
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代表的な呼び名
関東:セイゴ → フッコ → スズキ → オオタロウ
関西:セイゴ → ハネ → スズキ

ボラ「鯔・鰡」
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代表的な呼び名
オボコ → イナ → ボラ → トド

オボコは「おぼこい」の語源となりました、もともとは関西地方で使われていた言葉で「初々しい」「無邪気でかわいい」「あどけない」という意味で使われます。
イナは「鯔背(イナセ)」の語源になりましたが、現在では、まあ、使われません。江戸時代、若者間で流行った髷の形が「イナの背ビレ」に似ていたことからイナセ「鯔背なおにぃさん」となりました。今で言えば「ヤンキー」的なニュアンスがあったようです。
トド「とどのつまり」の語源になりました。出世魚ボラにドド以上はないので「トドの詰まり」お仕舞の意味で使われていましたが、現在では、どちらかというと「結論」という意味で使われますね。

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ボラの卵「カラスミ」はマジ旨い

カラスミ
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