思い出話「四角いジャングル」 #格闘技 #プロ空手 #地下格闘 #梶原一騎

思い出話「四角いジャングル」

突然、格闘技の話

「四角いジャングル」とは
基本的には総合格闘技で使われるリングの比喩表現です。
他、ボクシングやプロレスのリングも「獣の世界」と言いますか、同じ比喩が使われますね。
私の少年時代
まんま、「四角いジャングル」というタイトルの漫画がありました。
原作は、「巨人の星」や「あしたのジョー」で有名な「梶原一騎」さん。
ストーリーは、職業空手を修行する兄弟。その弟「赤星 潮」君が主人公。
兄が空手の天才児、アメリカプロ空手の「ベニー・ユキーデ」(実在の人物)に挑戦して惨敗し、その敵討ちとして、「黒崎健時」(実在の人物)の運営する総合格闘技道場「黒崎道場」に入門する。
と、ここまでは、創作なんですが、連載が進むにつれて、「週刊・格闘技ニュース」と化してゆきます。主人公の赤星潮は、もはや挑戦者ではなく解説者。先輩諸氏のセコンドに立つことしかしなくなります。
当時は、プロレスを中心に、格闘技番組がゴールデンタイムを飾っている時代だったので、こんな、格闘技ニュース速報な漫画も成立していたのでしょう。当時空手をやっていた事もあって、毎週夢中で読んでいました。(お金なかったので、本屋で立ち読みでしたけど)
藤猛
そんな、ある号で、ボクシングの元・世界チャンプ、藤猛さんが、引退後、随分経って、黒崎さんの勧めで、総合格闘技に転身するお話になります。
藤猛さんは、ハワイの日系二世で、まだボクシングが一団体しかなく、階級も少なかった時代の世界チャンピオンでしたから、チャンピオンの中のチャンピオンな時代の人です。
確か、当時はウェルター級チャンプだったと思いますが、現在の階級では、ひとつ下のスーパーライト級と表記されています。
総合格闘技なので、藤猛さんも、キックなどの練習をし、試合に臨みます。
対戦相手は、東拳司さん、藤さんはボクシングの技だけで、一分半ほどでKO勝ちしてしまいます。
目白ジム黒崎道場
僅か一分半のKO劇は、「総合格闘技」を謳う黒崎道場にとっては、由々しき問題となります。なんでも有りの、格闘術が、ルールに縛られたボクシングに負けたわけですから、なんとしてもこの不名誉は雪がねばなりません。
目白ジム黒崎道場・四天王の一人「大手稔」さんをぶつけてきます。
「大手稔」さんは、終始ボクシングの技だけで渡り合い、僅か数ラウンドの試合ながら、引退したとはいえ、元・世界チャンプを相手に引き分けてみせました。
この時の様子を漫画「四角いジャングル」では
セコンドの赤星潮が、
「先輩! 何故、キックを使わないんですか? パンチで互角なら、キックを使えば勝てるじゃないですか」的な事を言います。
「赤星よ。俺は、黒崎道場のプライドに掛けて、敢えてボクシングでアイツと戦ってみたい」的に、大手さんは応えます。
私も、空手こそ最強格闘技と思っていた頃でしたから、この「大手稔」さんのセリフには感動し、黒崎道場はボクシングでも世界チャンピオンクラスなんだ。と思っていました。
時代は流れ
私も大学に進学し、京都・大阪辺りの武術家と、少しだけ関りを持つようになると、少しずつ空手の欠点が見えるようになります。
確かに、空手は手も足も使えるが
空手だけやっていると分からない事
先ず、蹴り技というものは、体力の消費が甚だしいです。空手をやっていた頃、毎日10㎞余りのロードワークで、スタミナを付けていましたが、それでも、僅か2分程の本気モードの組み手で結構ヘロヘロになりました。(まあ、格闘技は体力の奪い合い、ダメージの与えあいですからね)そして、蹴っている瞬間は片足で立ちますから、不安定になりますし、何よりも、一瞬とは言え、フットワークが使えません。武術でいう所の「居付き」(動けない)状態になっている事にも気づかされます。これだけの事が、空手だけしかやっていないと、意外と分からないものです。
だから、名人クラスになると、使うべき場面でしか蹴り技を使わなくなるんでしょう。
ボクシングは
基本、スポーツなので、ルールがあります。攻撃はパンチ(正拳)しか使えませんし、攻撃出来る範囲も、腕を除く上半身(ベルトから上)( 顔面含む)。しかも原則的にサイドと正面しか攻撃出来ず、後頭部や背中からの攻撃は反則になります。
ですから、防御にも、ダッキング(前かがみ)、スウェーバック(上体を後ろに反らす)、クリンチ(相手に抱き着く)等、蹴りや組打ちを考えない、パンチ攻撃に特化した防御法があって不利な要素は確かにあります。
しかし、手と足の完全分業は強みになる
攻撃と移動も兼ねる足技は、どうしても攻撃の瞬間には移動は出来ず、移動の瞬間は攻撃が出来ません。片足ケンケンで対処する流派もありますが、ケンケンにしても一瞬一瞬は止まっていますし、大きなステップイン、アウトも難しく、身体の落下を利用した体重移動も難しくなります。不安定で転びやすく、しかも、足技はいたずらに体力を消耗します。
移動を脚に任せ、手が攻撃に特化しているボクシングは、ルールに縛られた不利な要素はあっても、立ち技系の中では、かなり完成されている部類に入るのではないか? と思う様になってきました。
実際、ある中国の拳法系武術の師範が言っておられましたが、自分の弟子で七年も修行積んだ男が、ボクシングを始めて僅か半年の男に、数秒でKOされたお話をされた事があります。
五体全てが使える格闘技だからといって、完成度が高いとは言えないのかもしれません。
あの時「大手稔」さんは
漫画では、「敢えてボクシングで戦った」とされていますが、蹴りを出したくても出せなかったんではないか? と思うようになりました。
蹴りを出せば、一瞬でも足は止まる。相手は元世界チャンプ、その一瞬の隙を逃さない事を、大手さんは感じ取っていたんではないか? 
「蹴りを使わなかったじゃなくて、使えなかった」
と思うようになりました。
中国のショッピングモールでの乱闘事件
何年か前、大勢の買い物客が行き交う、中国のショッピングモールで、中国武術と韓国テコンドーによる乱闘事件がありました。
道場生の勧誘争いが発端で、大乱闘。YouTubeにもその様子がアップされています。
観ると、やはり、蹴り技重視のテコンドー側の止まる瞬間を、中国武術側が見逃さず攻撃しています。なんとか持ちこたえている人も、蹴り技で体力を消耗し、手摺を掴みながら蹴りを繰り出す。その隙を踏み込まれてKOされてしまいます。
これは、テコンドーが弱いと言いたいわけではありません。あくまでも、欠点が浮き彫りになった事件だったいう事です。
しかし、先に触れた、空手の天才児「ベニー・ユキーデ」クラスの達人であれば、蹴り技の「居付き」の欠点などは、たいした問題ではないかも知れません。
【余談】地下格闘に怪物が存在する幻想
故・梶原一騎さんが漫画の中で作り出した幻想です。
梶原一騎さんは、漫画の中で、プロレスを「モンキービジネス八百長」と位置づけ、八百長の出来ない、ガチンコ選手を集めた世界を「地下格闘」と位置付けました。
しかし、現実は、例えば「地下アイドル」が地下で活動するのは、表で活躍できるだけの実力がない。もしくは、まだ、そのレベルに至っていないからで、格闘技の世界もこれと同じ事です。
表の格闘技に「八百長は無い」とは、私には言い切れませんが、それは地下格闘でも同じでしょう。
昔、アンディ・フグ選手が
御存命の頃、地下格闘のエースで、総合格闘技系の選手と、番組企画で戦っていましたが、地下では、なかなか技の切れる彼も、アンディさんには全く歯が立ちませんでした。
仮に、地下に怪物が存在するとして、表に比べてレベルの低い世界では、その実力は衰えてゆくでしょう。
大リーグの大谷翔平さんが、草野球チームに所属したとして、現在の実力を維持して行けるとは思えません。本人も、嫌だと思います。
それでも、現在のアニメや、漫画の世界で、地下格闘に怪物が存在する演出が在ったりするのは、幻想を産み出した梶原一騎さんの凄さですね。
まあ、以上は私の思い出話で、私の主観による見解ですので「こんな見方もあるんだな」と思ってください。
この記事が面白いと思ったら、ブログ村プロフィールをポチしてください
PVアクセスランキング にほんブログ村
子育てヒロシのオフィシャルブログ - にほんブログ村