吉野家で思い出したこと

学生時代。
まだ、京都に住んでいた頃の事。吉野家でアルバイトをしようとしたことがあります。
当時の吉野家の経営ラインは、現在とは違いますが、ユニフォームやお店のカラーは、現在と余り変わりませんでした。
あの頃、吉野家の時給は破格で、平均よりもメチャクチャ高かく、お金の欲しい、貧乏学生だった私も応募したんですが、この時の店長さん。牛丼に熱い人で、面接のとき、こんな事を言い出しました。
「…牛丼はね。宇宙なんだ」
「へっ?」
「考えてごらん、牛丼を食べる時は、どんぶりに顏を伏せるよね。その時、目の前には牛丼しか広がって居ないんだ」
「…しかし、それは、ラーメンやうどん。他の丼物でも同じことでは?…」
「いや、牛丼はね…§★@&%w×●◎!…そもそも牛丼とは§★@&%w×●◎!」
牛丼宇宙論。という、壮大な面接になってしまって、ありがたいであろう、お話も全く頭に入って来なくなりました。
半分眠った状態で聞き流していたんですが、ハッと目覚めると、
「…原子であり、原子核なんだ」
話の中で、牛丼がとうとう「核爆発」でも起こしたらしく、「電子」だの「原子」とかの話になっています。
(えっ? 牛丼も核兵器となりうるって話?)
まあ、理屈的には、どんな物質でも核分裂は起こしうるらしいですが、なんか、もう疲れちゃって、思わず「ふっ…」と苦笑してしまいました。
すると、店長さんは小さく「…あっ」と言ったまま、少し黙って、「…まあ、合否の方はね…追って連絡しますから」とすっかりご機嫌斜め。
(ああ、しもうた。これは不採用だな)
と思ったんですけど、
(でも、あんな調子で、牛丼宇宙論を毎日語られても嫌だし)
と思ってあきらめたことがあります。後日、預けてあった履歴書が送られてきて、「誠に残念ながら、今回は云々…」と手紙も添えられていました。
そんな人居る?
なんて、思われるかも知れませんが、世の中、傍目には「なんでそこまで」と思うような事に、信じられない位に、真剣にハマってしまっている人は、意外と居るものです。
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