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【小・中学生・理科】火薬と爆薬の話

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ノーベル賞。ダイナマイトを発明した、ノーベルに因んで、火薬と爆薬のお話をザックリと致したいと思います。

火薬と爆薬の違い

火薬とは

文字通り、「火」の「薬」の事です。
黒色火薬の場合、「硝石」というほぼほぼ「酸素」の塊が主成分で、無煙火薬が主流となった現在でも、「濃硝酸」という酸素の塊が主成分である事は変わりません。酸素が主成分な為に「火を点けると」猛烈に燃え上がるのが特徴で、これを「爆炎現象」と言います。
一気に、燃え上がりますが、実情は緩やかな燃焼です。主に、銃弾の発射薬として使われます。
密封した薬莢の中で、爆炎させ、その燃焼ガスの膨張を利用し、気密圧力の弱い弾頭部分を飛ばすという仕組みです。
アメリカ映画等でよく目にする「パイプ爆弾」も、大抵は黒色火薬を使った気密式爆弾で、確かに爆発はしていますが、密閉した空間で行き場を失った膨張ガスが一気に「破裂」、爆発に似た状態を作り出しているだけです。

爆薬とは

爆薬とは、「爆発する薬」の事で、正しくは爆発ではなく爆轟ばくごうと言います。
ダイナマイトの主成分はニトログリセリンですが、ニトログリセリン爆薬は、分子の結びつきが不安定で、特定の衝撃を受けると、分子の結びつきが一気に崩壊します。
この崩壊現象が「爆轟」いわゆる爆発になります。
火薬の様に、酸素が主成分で無いために、ダイナマイトにしたニトログリセリンを火にくべても、爆発しないで、ぼそぼそと燃えるだけです。とはいえ、ダイナマイトを火にくべる事は、機会があってもやってはなりません。…まあ、機会はそうそうないかも知れませんね。
プラスチック爆薬も同様で、ある特定の、電圧を掛けない限り、どんなに強い衝撃を与えても爆発はしません。
因みに、ダイナマイトは、ボール紙を巻いて棒状にしてありますが、剥き出しの粘土状態のままでも、雷管で衝撃を与えれば爆轟します。爆薬は気密性を必要としません。
映画等で、ダイナマイトへの導火線が、バチバチと燃えるシーンを見ますが、火薬と違って「火」を直接必要としません。あれは導火線の先に小さい火薬式の爆薬「雷管」が仕込んであり、この雷管で以て、爆轟を誘発させています。現在では、タイムラグがある上に、不確かな「導火線型雷管」は廃れ「電気雷管」しか使われていません。

火薬は爆轟する事もある

火薬を爆弾に仕立てる場合。気密性の高い、金属やガラス、陶器の器に入れ、導火線による着火で一見爆轟に似た状態を作り出さなければなりません。戦国時代に使われた焙烙火矢等がその良い例ですが、これは正しくは爆轟ではありません。
しかし、火薬を紙等で包み、金床等に乗せ、ハンマーで叩きつけると、火薬も爆轟を起こします。割と有名なメキシコの祭りでも、大型のハンマーに火薬を貼り付け、地面を叩くことで火薬の爆轟現象を引き起こしています。
大変危険なので、良い子は絶対にしないでくださいね。
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【こぼれ話】

昔のダイナマイトは食べられた

ダイナマイトとは、ニトログリセリン単体では不安定過ぎて、暴発を起こしやすかった物を珪藻土に染みこませる事で安定化させたものです。
ニトログリセリンは心臓疾患の薬としても有名ですね。心臓の働きを助け、血流を良くします。
珪藻土とは。海藻の珪藻が土化したもので、時々、山間部などで「食べられる土」として紹介されたりしますが、様は海藻だから食べられます。
円谷プロ円谷英二さん。戦争中、お腹がすいて、ダイナマイトを食べていた事があるそうです。
あと、1970年代初頭。過激派の爆弾テロ騒動時、工事現場等で、ダイナマイトが行方不明になる事件が時々ありました。当初、警察は「過激派が盗んだ」と見ていましたが、実は、現場のおっちゃん達が、酒のつまみに食べていた事が分かります。
海藻と日本酒は、良く合い、しかもニトログリセリンが血流を良くするので、よく酔えたそうです。
現在では、珪藻土に代わり活性吸収剤という物を使っているそうですが、70年代頃までは、結構、珪藻土を使ったダイナマイトは作られていたんですね。

ノモンハン戦争

1939年、モンゴル国境、日ソ間で勃発したノモンハン事件(ソビエト(現ロシア)側の呼称はノモンハン戦争)では、日本兵が戦車に走り寄って、粘土状のダイナマイトをソ連戦車に貼り付ける戦法を取り、戦果を上ています。戦車を無理に破壊する必要はなく、車内部に衝撃波を与えた訳です。なんか、中国武術の奥義みたいですね。
第二次世界大戦中、世界最強と呼ばれたドイツの「ティーガー」(一般にタイガーと呼ばれる)戦車の装甲は、正面が100ミリの鋼鉄に覆われていて、連合国側の徹甲弾AP弾=アーマー・ピアッシング弾)が弾かれて敵いませんでした。
しかし、そんな優れた装甲でも、爆薬を貼り付けて爆轟させると、衝撃波が伝わり、装甲の内側が剥がれて飛散する現象も起き、戦車の搭乗員を殺傷することが出来ました。(しかし、当時、ヨーロッパ戦線で実践された形跡はない)
旧日本軍がこの現象を知っていたのかはハッキリしませんが、一見無謀に見える戦法が、実は最も効果の高い戦法だったわけです。ソ連側もノモンハンを「最も苦戦した戦争」と位置付けているのも、これらの事があったからかも知れません。
大戦後になって、戦車の硬い装甲を貫くよりも、柔らかい粘土の様な弾頭で衝撃を与えた方が、効果がある事が発見されています。
しかし、それを回避する多重構造の装甲も発明され、さらに、それを段階的、尚且つ瞬時に打ち破るガス噴射型砲弾まで発明されています。

【追記】

※初回アップの時に書こうかと思ったことですが、「珪藻土」を使ったダイナマイトはここ100年作られていない。という情報もあります。しかし、第一次世界大戦第二次世界大戦の混沌とした時代に、作られていなかったという、情報は把握しにくかったと思います。特に、二次大戦時の日本などは、末期に松根油や、旧式の黒色火薬に頼り始めていました。そんな中、珪藻土式のダイナマイトを作っていても不思議ではありませんし、なにより、円谷英二さんのお話を信じたいと思っています。
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