ベランダに締め出されました #ベランダ #締め出し

倅が一歳半の頃、ヤツにベランダに閉め出された事があります。

「あっ、アブラムシがたかってる」
全ての不幸は、この発見から始まりました。

次兄から貰ったクチナシ
アブラムシが群がってそれを駆除しようとして、物置から園芸用殺虫スプレーを取り出して、
ベランダにでました。

その時、倅はリビングで遊んでいて、風の流れで、噴霧された薬剤が倅の方に流れて行きそうでした。
一時的にベランダの窓を閉め、アブラムシの駆除に取りかかります。
アブラムシの出す蜜を求めて、蟻の行軍も見え、息を詰め、虫の集った箇所に薬剤を散布していました。

「カ…チャ…」

「カチャ?」
振り向くと、倅が嬉しそうに窓の鍵を眺めながら、そのレバーを上げている所でした。
「あーっ、こらっ! 止めさーい」
叫びながら窓に張り付きましたが、倅は、
「また、お父さんが面白い事をしている」
見たいな顔をして笑っている。
「開けなさい!」
と言っても、倅は、オモチャを片手に独り高速スピンをしている。
「回ってないで、あ・け・な・さ・い!」
「まーん」
「まーん、じゃない」
「たーい」
「言い方を変えろと、言ってるんじゃありません!」
こっちは真剣だが、倅は遊びのつもりです。
暫く嫌がらせの様に、硝子越しに張り付いてニコニコしていましたが、テレビで「ピタゴラスイッチ」のピタゴラ体操が始まりました。
倅は、画面に釘付け。
両手を振り回したり、頭抱えてしゃがんだりしています。

「ああ、これは、深呼吸が終わるまで無理だな…」

体操が終わると、また、窓によってきましたが、父親の顔芸には飽きたのか、今度はボールを抱えて和室の方に歩いて行きます。
「こらー、帰って来ーい。シェーン! カムバッーク! …ああん、戻ってらしてー」

初夏。東京は晴れ。時刻は朝の10時を少し回った所でした。
ガーデニングは日当たりの良い方のベランダで行っているので、この季節、午後2時位までは陽に照らされます。

「どうしよう…暑いぞ。考えよう。冷静に…非難梯子使って下の階に助けを求めるか?
「あっ、済みません。倅に閉め出されちゃって」 って、言いながら梯子降りるの?
いやー、それは最終手段にしよう。そうだ! 階段を降りて行く人に助けを求めよう。
よし、イメトレ、イメトレ…

「済みませーん。そこのかたー。わたくし、ベランダに閉め出されてしまいましたぁ。助けてくださーい」

…これじゃあ「南海キャンディース」の山ちゃんだよ…
あー、お向かいのYさんか、管理人さんが通りかからないかなぁ…暑いなぁ…」

その場にしゃがみ込んで、落ちていた小枝を拾って、八つ当たりの様に、アブラムシの死骸をこそげ落とし、気を紛らわせました。
暑いと、ろくな考えは生まれません。

「…セガレ ガ ハンニン ダ…
おおっと、ダイニングメッセージ(正しくはダイイング)考えてどーすんだ。」

と思案しているうちに、倅が戻ってきていました。
「おっ、おい、おい、こっちおいで…そそそっ…お父さんの為に、ここのレバー下げてくれないかなぁ?」
窓に張り付いて懇願する姿は、かなり滑稽でした。
「あっくん?」
きょとんとした顔で、私を見上げている。
「そうそうそう、あっくん、あっくん」
あっくんが、どういう意味かは解りませんが、この際、倅に調子を合わせる事にしました。
「そのレバーをね「キレイキレイしようね」(蛇口のこと)と同じように下げるの」(水出す時は上げるけど)
その意味が解ったのかどうか、倅は鍵のレバーに手を掛けてくれました。
「それを…そーそー、下げる下げる…戻すなー!…押し込むなー!」
倅は、驚いて後ずさりします。
「いやいや、お父さんはね。触るなって叱っているんじゃないの」

絶望的な心境でした。
また、その場にかがみ込んで、アブラムシをこぞけ落としていると、
「カチャ」
と、音がして鍵が外されていました。
「あっ、開いた」
立ち上がり、
「触るなよ。下がっていなさい。危ないから」
倅に言い聞かせながら、そっと窓を開けました。
締め出しから10分~15分位だったでしょうか、
「生還」
という実感でしたね~。
倅が、満面の笑顔で抱きついて来る。
「ふぅ…今叱っても、何の事か分かんないよね…まあ、お父さん、これからは気を付けるよ」
という事で、倅にはミルクを作ってやり、私は麦茶をコップに注いで。
「さ、お父さんと乾杯だ…ファイトォ! イッパーツ」
なんだかね。私達親子は。(^-^)v

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犯行当時の倅

※この事が原因でもありませんが、次兄から貰ったクチナシは、その後マンションの中庭に植えさせてもらいました。

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問題となった当時のクチナシ