【新選組血風録】 #司馬遼太郎 #近藤勇 #土方歳三 #沖田総司 #斎藤一 #新撰組 #新選組

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【選組血風録】司馬遼太郎 著(中公文庫)

子育てヒロシ的評価=★★★★★

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暗殺、粛清、闘争に明け暮れる新選組隊士の悲哀を綴る、15の短編を収録。

「油小路の決闘」
芹沢鴨の暗殺」
「長州の間者」
池田屋異聞」
「鴨川銭取橋」
虎徹
「前髪の惣三郎」
「胡沙笛を吹く武士」
「三条磧乱刃」
「海仙寺党異聞」
沖田総司の恋」
「槍は宝蔵院流
「弥兵衛奮迅」
「四斤山砲」
菊一文字

【あらすじ】

油小路の決闘

勤王優勢となった慶応三年。時勢を観るに敏な伊東甲子太郎は、新選組を脱退。「御陵衛士」通称・高台寺党を結成。近藤・土方の暗殺を企てたとして、七カ月ほどで伊東派は粛清されてゆく。

芹沢鴨の暗殺

新選組結成当初、新選組は芹沢派と近藤派に分かれていた。数では近藤派が勝るが、影響力では芹沢鴨の方がある。しかし芹沢は狂人とも思える乱行を働く。副長・土方歳三新選組を近藤派一本にするため、沖田総司ら試衛館派によって芹沢鴨を暗殺する。

長州の間者

浪人・深町新作は、長州に仕官する条件として新選組に間者として入隊することになった。利用されるだけの自身の立場に苦しみ、やがて新選組隊士たちが取り囲む中で同じ長州の間者と対決させられ、粛清される。

池田屋異聞

大坂、鍼師の息子、山崎烝は、ささいな喧嘩から、赤穂浪士の中でも、誉れの高い「大高忠雄」の子孫、大高忠兵衛と関わる事になり、自分が赤穂浪士から脱盟した「不忠の臣」奥野将監の子孫と知る事になった。(脱盟の機会を与える「神文返し」の使者として「大高忠雄」が「奥野将監」の元を訪れている)やがて新選組の監察となった山崎は「池田屋ノ変」の闘争で大高忠兵衛と再開する。

鴨川銭取橋

武田観柳斎は、権威権力主義者である。卑屈なまでの阿諛おべっか使いで、局長・近藤勇に気に入られて行く、甲州流軍学を知っていることから、当初は、副長・土方歳三にも気にいられ「軍学師範」にまでなるが、直ぐに隊はフランス式軍法を導入。武田観柳斎は、権威を失う。権威を失うと、武田の性格の害だけが剥き出しになり、土方に疎まれ始め、巧妙な策略によって武田は薩摩方に裏切りに走ってしまう。近藤宅で別れの酒宴がひらかれ、その帰りに鴨川銭取橋で、斎藤一に討たれてしまう。

虎徹

日陰町の刀屋・相模屋伊助の元に「虎徹はないか?」と尋ねてくる武士がいた。後に、京洛で勤王浪士を震え上がらせる、新選組局長・近藤勇である。しかし、この時は、京都へ向う浪士組に加盟したばかりで、その支度金二十両で「虎徹」を求めにやってきていた。虎徹が二十両やそこいらで買えるはずもない。刀屋は田舎者と観て、虎徹に似た贋物を近藤に売る。近藤は虎徹と信じ、新選組を結成した後も偽虎徹をふるって活躍する。事実恐ろしい程に「斬れ」る。やがて、刀剣の目利きが出来る斎藤一らに「贋物」と指摘されるが、近藤の理屈は「斬れるから本物」であった。後に大坂の豪商・鴻池から本物の虎徹を贈られるが、鴻池・虎徹を帯びると、不運、事故にあう事が多い。「鴻池虎徹は偽物だな」という、作中の近藤勇の思考が面白い。

前髪の惣三郎

美男の新入隊士加納惣三郎は、同期の田代彪蔵に男色の世界へ引き込まれた。やがて男色を巡って隊内で騒動が起こり、加納は土方と沖田に粛清される。大島渚監督の映画『御法度』の原作になったエピソードのひとつ。(加納 惣三郎。現存する新選組隊士の名簿に名前は存在していない。ただし、記録では、京都押小路の木綿問屋越前屋の次男で、幼少より剣術を学び、十八歳で新選組に入隊。局長・近藤勇の小姓を務め、次いで小頭格に昇進。この頃から、遊郭・島原通いをするようになり、中でも、輪違屋・錦木太夫へ入れ上げ過ぎた為、金に困り始め、金策の為に辻斬り強盗を働く様になったとある。新選組・田代何某が、加納処分役に任命されるが返り討ちにされる。それでも、加納は島原通いを続けていたが、ある日島原へ向かうため屯所の塀を飛び越えたところ、副長土方歳三らが待ちかまえており、即座に斬殺された。とある。)

胡沙笛を吹く武士

奥州浪人・鹿内薫は剽悍な武士だったが、妻を娶り子供を持つと、命を惜しむようになった。闘争の現場で怯懦な振る舞いが目立つようになり、内偵捜査で身体が動かない恐怖に見舞われる。局中法度「士道不覚悟」に抵触し、粛清の運命をたどる。

三条磧乱刃

新入隊士国枝大二郎は六番組組長井上源三郎と出会い、その好々爺然とした人柄に惹かれた。井上はそれほど剣の腕は立たないが、近藤、土方、沖田と同じ多摩出身の試衛館の門人で彼らと強い連帯を持っていた。尊攘浪士に剣術を謗られた事件をきっかけに井上と国枝は2人だけで浪人たちの根城へ切り込みをかける。大島渚監督の映画『御法度』の中盤に、このストーリーが盛り込まれている。

海仙寺党異聞

長坂小十郎は、特に新選組に入りたかった訳ではないが、同郷の中倉主膳の紹介で入隊した隊士である。その中倉は妾宅で密通相手に背中を斬られる、というしくじりをする。士道不覚悟として「斬首」。「太刀取」は長坂であった。行きがかり上、長坂は同郷というだけで、親しくもなかった、中倉主膳の仇を討たねばならなくなる。…新選組隆盛の頃、唯一、副長・土方歳三自らが、金銭を渡して隊から逃がした男の話。

沖田総司の恋

池田屋で大量の血を吐いた沖田総司は、会津藩の紹介で京の名医を訪ねる。労咳結核)だった。沖田は町医者の娘に淡い恋心を抱く。新選組の京での立場を知る沖田はその娘と会うだけで良かったが、沖田と同郷で強い連帯感を持つ近藤と土方は、その娘を沖田の嫁にしようと勝手に動き始めてしまう。

槍は宝蔵院流

斎藤一はほんのささいなことから、宝蔵院流槍術谷三十郎と関わりをもった。谷は新選組に入隊して幹部に迎えられる。腕が立ち家柄もいい谷は、息子・谷周平(史実では三十郎の弟だが、この小説では「倅」と書いてある)を近藤の養子にして隊内で大変な権勢を持つが、斎藤だけは苦手だった。やがて谷の立場が凋落し、粛清されるまでを斎藤の視点で描く。

弥兵衛奮迅

薩摩郷士富山弥兵衛は喧嘩が元で芸州藩士を切ってしまう。薩摩藩にいられなくなった富山は伊東甲子太郎の仲介で新選組に入隊する。土方は薩摩藩の間者ではないかと警戒するものの、素朴で愛嬌のある富山がとても間者とは思えず、警戒を解いてしまう。だが、富山こそ天稟の間者だった。
「薩摩・示現流は初太刀を外せ、二の太刀からは他流が勝る」
近藤勇らが、こう語ったと聞くが、示現流の打ち込み稽古を見た事のある私からすると、初太刀を外したところで、直ぐに二の太刀が降ってくるように思われました。その初太刀でさえ、本当にかわすことが出来るかどうか? という程に迅い太刀筋です。因みに、薩摩藩には示現流と自顕流があり、基本どちらも触れるもの全てを斬る。という心意気ですが、一般に示現流は上士、自顕流は下士が学ぶ剣法とされます。走りながら斬る事の多い自顕流は、基本の置きトンボの構えが若干違います。

四斤山砲

永倉新八の子供の頃の師匠筋を名乗る大林兵庫という浪人が屯所を訪ねてきた。永倉はまったく覚えがないが、大林にあれこれ言われて、そういうものかと信じてしまう。砲術を修めたという大林は、永倉の縁者ということもあって砲術頭に抜擢されるが、それまで砲術頭だった阿部十郎の立場がなくなってしまった。阿部は大林の砲術が紛いものだと見抜いていた。阿部は大林に侮辱を受けたことから伊東一派とともに脱退。やがて、阿部は鳥羽・伏見の戦い薩摩藩の砲兵隊に加わり、新選組の大林の大砲と対決する。

菊一文字

刀を研ぎに出した沖田総司は刀屋から代わりの刀を借り受ける。それは鎌倉期の名刀菊一文字だった。その帰りに沖田は陸援隊士戸沢鷲郎に襲われるが、刀を抜かずに逃げてしまう。沖田の人柄に惚れた刀屋が菊一文字をただで譲るが、やはり沖田は使おうとはしなかった。労咳のために自分の命がわずかだと気付いていた沖田は、数百年永らえた菊一文字で人を斬る気がしなかった。だが、沖田の部下が戸沢に斬られてしまう。沖田は菊一文字で戸沢を斬る決意をする。
新選組グッズ
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御法度【DVD】
松田龍平北野武崔洋一武田真治浅野忠信 他
子育てヒロシ的評価=★


【こぼれ話】

大島渚監督の「御法度」は「新選組血風録」中の「前髪の惣三郎」と「三条磧乱刃さんじょうがわららんじん」を合わせた作品になっている。
衣装担当は「ワダエミ」さんなので、映像的には美しいのだが、沖田総司はともかく、土方歳三近藤勇が全く私のイメージではなかったので、余りおススメしたい作品ではありません。
作品の中で、新選組はダンダラの羽織を着ておらず、全身黒ずくめであるが、史実的にも正しい様です。
ドラマで良く見る、ダンダラ模様の羽織は、隊士から評判が悪かったらしく、結成一年程で廃止になり、その後、黒ずくめに統一された。




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