年末に成ると思い出す事のひとつ
おせち料理の配達
私のブログに何度も登場する。宅配業「ブラックキャッツ」時代のお話です。
年末。クリスマス繁忙期を過ぎたあたりから、今度は「おせち料理」の配達が多くなります。
冷凍状態で配達し、支払いは多分全て「代金引換」。
年末の繁忙期なので、私らパート以外に、学生アルバイトも臨時に雇われましたが、その中に普段からパートで入って居る大学生「K君」の紹介で入った「N君」という、某大学生が居りました。背の高い気の良い男の子なんですが、なんか、ちょっと、とぼけた感じ。
臨時雇いなので、「代引き」等の釣銭は持たされていません。「代引き」や「着払い」は行かせないのが基本なのですが、代引き商品の多い年末ではそうも行きません。
ドライバーさんが財布を渡して、配達に行かせていました。
クールボックスにおせちを詰めて
「この三つは、代金引換だから、必ずお金貰ってきてね。はい、これ釣銭。…絶対、お金貰ってくるんだよ」
ドライバーさんに言われて、N君は元気に返事をして配達に向かいました。
で、帰ってきたN君は、見事全品お金を貰って来ていない。
「お金は?」
「あ、忘れました」
ドライバーさんはダッシュで、集金に向かいましたが、三軒の内、二軒は既に出かけていて、直ぐに回収できませんでした。
「あんだけ言っただろ!」
怒るドライバーさんに、反省しているのか分かりづらいN君。
ドライバーさんの説教が終わったあと、トラックの後ろで、趣味でやっているブレイクダンスの練習を始めます。ある種の転移・転嫁行動かも知れませんが、ダンスの練習をするN君を見ていると、おかしくなって、
「サークルか何かで、ダンスやってんの?」
「スっ!」
「K君もやってんの?」
「いや、ヤツはやらないっす」
N君はN君なりに、反省しているのかも知れませんが、「誠意」というものが全く感じられない一コマでした。
因みに、集金しそびれた残りの二軒は、夕方にドライバーさんが再訪問して、回収できました。
団地
配達区域に何棟か、所謂「団地」がありました。
ふるぼけた団地で、電気メーターが円盤式。電気の使用状態で、赤い印のついた円盤の回転速度が変わるヤツです。
「在宅か不在か」、メーターの動きを目安にしておりましたが、結構な割合で円盤の止まっている家庭もありました。
留守であっても、冷蔵庫が動いて居れば、ゆっくりでも円盤は動いているものです。しかし、全く動いていない。でも、中に人が居そうな気配はある。
インタホンの無い家庭も多かったので、ドアノックをすると、中からおばあさんが出てきたりしていました。部屋の中は窓明かりだけで、暗い。
電気代の節約で、ブレーカーを落としていると言っていました。
「冬なら、物も腐らないでしょ」
寒さは、服を着こめばなんとかなる。と言っておりました。年金だけだと苦しいお年寄りが多く住んでいる団地でしたが、なんだか身につまされる思いでした。
冬はまだ良い
冬は、かじかむ寒さでも、着こめば、確かになんとかなるでしょう。
問題なのは「夏」。窓を開けても、暑い日はどうしょうもない。扇風機位は使わざる得ないとは思いますが、団扇でしのいでいるらしい。冷蔵庫はさすがに使っているとは思いますが…うーん、それも分かりません。そんな、切ない団地もありました。
昔は、なかなか入居できなかった団地
私が出版業界に入ったばかりのペーペーだった頃。給料は恐ろしく安くて、給料日から二週間も経つと、もうピーピー言っている様な状況でした。
出向で校正に来ていたおばちゃんが、「団地なら家賃も安いわよ」と教えてくれたので、入居希望のハガキとか出したものですが、当時は、競争率も高く、給与がある水準に達していると入居できないものでした。
やがて、世間も、それなりに豊かになったのか、若者でも風呂付のワンルームに住める様に成り、今では、団地の方から居住者を求めている様な始末です。
私も、そうこうしている内に給与も上り、団地への応募は止めてしまいました。
今でも、町を自転車移動していたりすると、団地だった所が、解体されている光景に出くわしたりしますが、働けなくなって、年金だけが頼りというお年寄りの為にも、残って居て欲しいな。と思ったりします。団地に代わる居住システムが確立されている事を願います。
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