出来ない事は安易に出来るといわない
えー、いっぱいのお運び、厚く御礼を申しあげます。
やってみた事はないけれど、
「やったら、出来るんじゃないかなー」
なんてー事は、ま、多々ありますが…
拙が、まだ京都は、北白川界隈に暮らしていた頃の話でございます。
「おう、居てるか?」
「ひとの顔見て、なに寝ぼけた事いうてんねん。目の前に居てるがな」
「何絡んでけつかんねん。世間並の挨拶やがな」
「まあ、ええがな…おあがり」
「おあがりて…食いモンなんかどにもあらへんで」
「じぶんと漫才やっとる暇はあらへん…なんぞ、用でもあんのんかい」
「ああ、そやそや、実はな…まあ、照れくさいんやけれども、コレが出来てな」
「お前の小指なら、以前から生えてたで」
「なぶりなや! おなごが出けた、言うてんねん」
「ほう、尻にでけたか? 背中にでけたか?」
「デキモンみたいに言いないな…先達って、洛東女子大の娘らと、合コンやったんやけれども」
「おう、俺らに内緒でやったっちゅう、あの有名な、抜け駆けコンパかいな」
「言いないなて、スマン思うてる。競争率高こうなる思うて、皆に黙っててん。最前から機嫌悪いんはその為か? 堪忍やでぇ、今度、彼女の友達紹介するさかい…」
「そいう事なら、お話を聞かせてもらいまひょか?」
「コイツ、急に愛想ようなりよったな…まあ、ええわ。んでな、これから長い付き合いになるんやし、親友であるお前と、他の二人にも、ちゃーんと紹介したい訳や。そこで、今夜なんやけど、木屋町の「丹虎」いう居酒屋で一杯やらへんか? ちゅう話やねん」
「おう、それは、なにを押しても行かせてもらうわ」
という訳で、彼女居ない三人の学生が、その夜、待ち合わせた居酒屋「丹虎」へとやって参ります。
で、紹介された、友達の彼女というのが、チョーかわいい。洛東女子大といえば偏差値の高い、お利口さん女子大でございます。
「これは才色兼備のおなごはんや」
というので、三人の男どもは、ほめちぎる。お友達を紹介してもらいたい下心もあって、普段褒める事のない彼氏の事も褒めちぎる始末。
「みなさん、ええ人どすなぁ、ウチも安心しましたわ、ささ、おひとつ」
「ああ…こりゃ、どうも…おおきに…別嬪さんで、気が利きはる…これは、カナンなぁ…お前、このお嬢の事、裏切ったらアカンぞ。…なあ、浮気は許さへんやろ?」
「う~ん、そうどすなぁ…素人はんやったら許しまへん。けど、玄人はんやったら、ウチ許せると思いますぅ」
「…ホンマかいや?」
「へえ、ソープとかやったら、男の甲斐性と思うて、かましまへんゑ」
「マジか? いや…出来たおなごはんや…ホンマ、許す事出来はんの?」
「へぇ…出来ますぅ」
そんな事がございまして、ヤツも彼女とナニする為に、こぎれいな新しいアパートに越してゆき、
「彼女が出来ても、お前らとの付き合いは、今まで通りや」
と言いながら、付き合いも段々と悪くなっていったので、ございます。
二人が付き合うようなって、半年ほども経った頃でしょうか? 拙の元に一本の電話がございました。
━ 子育て! エライ事や、彼女が別れる言うて、メッチャ怒ってんねん。どないしょー? ━
「どないしてん?」
━ あのなぁ、この間、ソープ行ってんねんけど、その事、彼女に言うたら…━
奴もバカでございます。黙っていれば良いものを、
「…あのなぁ」
「なんゑ?」
「いや、まあ、あれなんやけど」
「気色わるいなぁ、サッと言いよし…口籠る男はんってカッコ悪い」
「俺、今日、雄琴へ行って来てん」
「…お・ご・と…ゆうて…ソープランド?」
「うん💛」
「はあっ? オマエ、何してくれてんねん!! ふざけんなやぁ!!」
「えっ? えっ? でも」
「デモもストライキもあるかい! なめんなやぁ!」
「えっ? えっ? えっ? えっ?」
これから先は、伏字だらけの不毛な喧嘩、いや言葉による虐殺が展開されたのでございますが、彼女はヤツの部屋から、自分の荷物は引き上げる。それまでプレゼントしたものは取り返す。それはもう、大変でございました。
彼女も、プロ相手なら許せるとは言ったものの、実際にやられると、許すことは出来なかったのでございますな。
やった事もない事を、安易に出来ると言ってはならぬ…というお話でございました。
奴と彼女は、その後、拙達が取りなして、一度は復縁を致しましたが、その後やはり別れてしまいました…お後がよろしい様で…
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