大坂と江戸 #東京 #江戸 #大阪 #落語

大坂と江戸


えー、一杯のお運びありがとうございます。子育亭ヒロシでございます。
九月下旬頃から公私とも、なんたが急に忙しくなりました。
今年の夏は、暑うございましたな。なんでも、真夏日が九十日を超えたんだそうです。
九十日、三か月分ですよ、あーた。一年で四日に一日は真夏日だったてんですから、尋常ではありません。稲の方は実が焼けた…なんて話もありましたが、ブドウが豊作。
なんでも「従業員マスカット」てのが、例年よりお安く出まわったそうで…えっ? なんだい定吉…えっ? えっ? あ、そうかい…失礼いたしました「社員マスカット」だそうでございますね…
落語の枕話の中に
江戸者と大坂者、そして名古屋者の三人が会食をし、江戸者は見栄っ張りにも奢ろう考え、大坂者は何方どちらかに払わせようと考える。名古屋者は、といいますと、これが既にお礼の言葉を考えていた。
なんてのがあります。
拙の知り合いの中にも、図々しくも「何時だって酒は奢ってもらえるもの」と思っている愛知県出身者が居りましたが、まるで、落語に出てくる名古屋者そのものでした。
大坂者はガメツクて、江戸者は見栄っ張り。
…ですが、拙が思いますに、ガメツイのは江戸者の方ではないかな? と思う所がございます。
江戸の方がガメツイ
その昔、江戸の町にも、大坂の町にも「長屋」という物がございました。
長屋とは、壁一枚で仕切られた、平屋のアパートの様なもので、江戸で「大家」さんとか大坂では「家主」さんと呼ばれる方が管理しておりました。
長屋には、共同便所トイレがあるわけですが、此処に溜まった糞尿は、近郷のお百姓さんに肥料として売って、長屋の収益にしておりました。
な、もんですから、家主さんも「ばばは他所ですな、絶対長屋でせえよ」やかましかったようです。
収益は、大坂では長屋の住民全体に分配されるのが普通でしたが、これが江戸だと、大家さんの一人占め。落語話の中にも「他人のクソで年越しやがって」と店子が悪口をいう場面もあったりします。
現代でも、「江戸の方がガメツイんとちゃうか」と思う所はあります。
それが「賃貸アパート」。
東京で賃貸住宅を借りようとすると「敷金」の他に「礼金」という、不思議な物が掛かります。
関西には「礼金制度」はありませんから、拙も上京した当初は戸惑ったものです。
「この礼金って何ですか?」
不動産屋さんに聞くと、
「住まわしてもらう、そのお礼金」と言われて、驚いたものです。
パンの耳
これは、大阪というよりも京都のお話ですが、パン屋さんに行くと、サンドウィッチを作った食パンの耳って、まず「無料」で頂けました。
京都は学生の多い街ですから、貧乏学生救済の意味もあったのでしょう。私の知る限り、どこのパン屋さんでも無料で頂けたものです。
これが、東京のパン屋さんだと、「一袋何円」みたいにして売っている。
パン屋さんの作ったものですから、端切れとは言え、売っても然るべきです。
礼金」よりは、納得行きますが、やっぱり、なんか、こう「…ケチくさ」って思ったものです。
「鰻の蒲焼」
江戸前では背開き、上方では腹開きに捌きますが、江戸前は焼く前に蒸して脂を落とします。
上方からすると「なんで、そない勿体ない事すんねん」という所でして、やっぱり蒸さない方が脂がのって旨い。
この、江戸前焼きと上方焼きの境目が、岐阜辺りでありまして、この辺りの鰻職人さんは、江戸と大阪両方に修行に出られる方が多いそうです。
江戸の食文化
こんな言い方をすると、江戸っ子さんに怒られると思いますが、上方からすると江戸前の食べ物って…正直、「貧乏くさい」…「もんじゃ焼き」なんてありますが、初めて食べた時なんか、シャバシャバしていて、なんか、しみったれた食べ物に感じます。
「粉をケチるなや」
そんな気分でした。
お菓子も、余りよくありません。関西の和菓子って、なんやかや言うて、やっぱり洗練されています。それに対して、江戸の「きんつば」「雷おこし」…うーん、やっぱり、どこか、モサッイ…江戸風に言うと野暮ったい感じがいたします。
蕎麦
江戸というと蕎麦、大坂といえば饂飩、という印象がございますが、江戸も元々は饂飩の方が盛んでした。今でも、多摩「分倍河原」周辺の名物に饂飩がございます。
まあ、この蕎麦の食べ方ですが、江戸ではソバツユに…チョン…とだけ浸けて食べる。
「蕎麦そのものの味を楽しむ」
なんて、粋がっておりましたが、落語のお話にも、
「あーあー、どうも野暮だねぇ、そんなに、べしょべしょツユにしたてんじゃねーよ。蕎麦てなぁ、先っちょに…こう…チョン…と、着くか着かねえくれえで…ゾゾゾゾッ…喉で食うのが粋ってもんだ」
と蕎麦の食い方にウルサイ男が出てきます。
この男が年取って、その忌野際に、
「あー、一度で良いから、蕎麦をどっぷりツユに浸けて食べてみたかった」
と呟いて亡くなります。
江戸のやせ我慢
こうして、考えますと、昔の江戸者は「見栄っ張り」とい言うよりも、意地っ張りで、やせ我慢をしていたんでございましょう。
「江戸っ子は宵越しの金は持たねぇ」
なんて言っておりましたが、江戸の物資の殆どは、大坂表から船で運ばれてきておりましたから、輸送費が掛かって物価が高い。
宵越しの金は「持たねぇ」のではなくて「持てねぇ」だったようです。
落語
1800年前後になりますと、江戸文化に華が咲きはじめまして、「これからは江戸や」という訳で、上方から大勢の落語家がやってまいりました。
最近では、必ずしもではありませんが、上方落語では「膝隠し」とよばれる小さな衝立の裏に「見台」という机を置きます。
その見台を「張扇」と「拍子木」でパンパン、チョンチョン叩きながら、お話を進めますが、これは、落語がまだ「辻話」とか「落とし話」と言われた頃、京都の四条河原町の辻で、お話をしていた頃の名残でございますね。
青天井、往来での興行でございましたから、音で注目を集め、短い話「枕」で引き付けて置いて、本題に入る訳です。
「寄席」の現在では「枕話」は無理に必要ないんですが、これもまた、名残なんですね。
因みに落語家の演じる場所を「高座」と言いますが、これも、辻話の頃、立って聞いている人垣より高い座を設けていましたから、それこそ「高座」の名残なんですね。
さらに、因みになんですが、江戸で落語の演じる所を「寄席」と言います。大坂では「寄席」とは言いません。今でも「演芸場」という事が多いです。
江戸で落語が演じられ始めたのは、人の集まる風呂屋の二階でしたので、端から落語を聞きに来る人たちばかり。人の寄る席→寄席と呼ばれるようになったようです。
更に、更に、因みになんですが、お笑いの世界に「ギャグ」ってありますね。
元々は英語でして「gag」と書きますが、「猿ぐつわ」とか「拘束」という意味があります。
英国はお芝居が盛んですので、開演の時、ザワザワする客席を黙らせる、注目させる為に最初に本筋関係のない滑稽なパフォーマンスをしていたようで、客を黙らせる「猿ぐつわ」をかます。という意味がございまして、ここから、転じて日本では一発芸の様な物を「ギャグ」というようになりました。元々は、芝居用語なんですね。
警察24時
昨今では、闇バイトの強盗なんて、物騒極まりないモノがありますが、強盗も大阪の方が妙に可笑しみがございます。
四、五人で貴金属店に強盗に入ったものの、ショーケースが頑丈でガラスが割れない。
東京なら、ただ諦めて逃げそうなものですが、大阪は「…また来るわ」と捨て台詞を残しています。大阪者は、なんか、言わんと気が済まんのでしょうな。
食い逃げ
大阪のとある繁華街。その交番に、食い逃げ犯が連られて来ます。
所が、お巡りさん達は、警邏に出ていて不在。
食い逃げ犯は「これは、逃げるチャンス」と思ったのでしょう。
「便所行かせてください」
と、食い逃げし損ねた、お店の人に懇願いたします。
「アカン、ここでせぇ」
「でも、ウ〇コですねん」
「かめへん、ここでせぇ」
と、やり取りしているうちに、警邏からお巡りさんが「どないしてん?」と帰ってくる。
年配のお巡りさんが、食い逃げ犯に年齢を聞きますと、二十三歳。
「兄ちゃん、これな、民事やねん。お店に金払ろうたら、家、帰れんねん。誰ぞ、身元引受人おらへんのか?」
「妹が居てます」
「妹さんて、年なんぼや? 未成年やったらあかんぞ」
「二十六です」
「二十六やったら、姉ちゃんと違うんか?」
「妹みたいなもんです」
男は、妹みたいな姉ちゃんに電話を架けさせられ
「お前がな、金、払ろうてくれたら、俺、帰れんねん」
などと、やっておりましたが、しかし、この男、一体、何を胡麻化そうとしてたんしょう。大阪は、犯罪者もどこか面白い奴が多い。
万引き犯
万引きGメンを扱ったドキュメンタリーなんかも、観ていると、断然、関西の万引き犯の方が面白いですね。
面白いと言っては不適切かもしれませんが、面白いので仕方ありません。
拙の学生時代の友人が、大阪のコンビニでバイトしていた時、万引き犯を捕まえましたが、その第一声が凄いもので「見逃せ」と言ったそうです。
東京の万引き犯も、身勝手な事は言いますが、まだ、辻褄を合わせようと必死。
例えば、捕まった高校生らしい万引き犯は、「部活やってて、友達に迷惑かけられないじゃないですかぁ」と言い訳します。要するに大会に出られなくなると言いたいらしく、だから見逃してくれ。という態度でした。
店長さんに「それは、万引きする前に考えることだな」と返されて、「…はい」と返事する高校生は、顔はボカされてありましたが、見逃してくれない事に不服を感じている雰囲気は伝わってきます。
対して大阪は、
「はいはいはい、自分、レジ通してない品モンもっとるわな?」
「何言うてんねん! 知らんがな。出鱈目言うたらあかんわ」
「ワシ見たんやで、ちょっとコッチ来てくれるか」
スーパーの事務室で、万引きした品物を指摘されても、「知らん」と言い張り、
「せやったら、コレがシューっと飛んで、アンタのバッグに入ったちゅうんか?」
「せや、シューって飛んできて入ってきたがな」
まるで、漫才の掛け合いでございます。
そこへ、店長さんが入って来て、
「ウチはな、警察に突き出すだけや。万引きしたら出入り禁止や、もう来んといてくれるか」
と恫喝いたしますと、万引き犯は、フッと笑い。
「それはん。…ここが、ウチから一番近い」
と、落語のオチの様な事を言う始末。

「大坂と江戸」でございました。おあとがよろしいようで。
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